二人の関係を語る上で避けて通れないのが、1968年の浜木綿子と市川猿之助(当時)の離婚劇だ。結婚生活はわずか数年で破綻。浜は生後間もない香川を抱え、シングルマザーとして生きる道を選んだ。当時の芸能界において、離婚した女性が一人で子供を育てながら第一線で活躍し続けることがどれほど困難であったかは、想像に難くない。
彼女は愚痴をこぼさず、ただひたすらに働き、息子を育て上げた。香川が東大を卒業し、役者の道を志したとき、彼女の胸中に去来したものは何だったのか。それは単なる心配ではなく、自らが身を置く「表現」という名の魔物への警戒だったのかもしれない。