靖国神社の宮司職は、常に政治と信仰の交差点で猛烈な風圧に晒されてきた。特に小堀邦夫氏の任期中に起きた非公開会合での発言漏洩問題は、神道の伝統的価値観と皇室に対する認識を巡り、致命的な亀裂を生んだ。皇室への不敬とも受け取られかねない異例の批判が外部に漏れ伝わると、社務所内外には激震が走り、最終的に発言撤回と辞任という異例の結末を辿った。
この前代未聞の失脚劇が残した爪痕は深く、後任人事の調整は難航を極めた。単に伝統的な神職のキャリアを持つ人物を据えるだけでは、失われた社会的信用と崇敬者の信頼を取り戻すことは不可能だったからだ。そうした過酷な混迷の中で浮上したのが、海上自衛隊の元海将であり外交官のキャリアも持つ大塚海夫氏の起用という超異例の抜擢だった。伝統主義が支配する境内に、防衛と外交のプロフェッショナルが足を踏み入れた瞬間だった。