『ひつじのショーン』の最大の特徴は、羊たちだけでなく、牧場主をはじめとする人間キャラクターも明確な意味のある言語を一切話さない点にあります。牧場主が発するのは「うーん」「あー」「ハッ!」といった唸り声や感嘆詞、ハミングのような喃語(なんご)に近い音声のみです。
この徹底したノンバーバル(非言語)手法が採用されている理由は、アードマン・アニメーションズが誇る「全世界共通で理解できるスラップスティック・サイレント・コメディ」の伝統を継承しているからです。チャールズ・チャップリンやバスター・キートンらの無声映画がそうであったように、言葉による説明を排し、身体の動き、目の配り方、間の取り方だけで感情を伝えることで、言語の壁や文化の違いを完全に無力化しています。
この独特な「声」を担当しているのは、イギリスのベテランコメディアン兼声優のジョン・スパークス(John Sparkes)です。スパークスは言葉を発しない制約の中で、声のトーン、息遣い、抑揚の変化だけで牧場主の怒り、困惑、喜び、怠惰といった複雑な感情を完璧に表現しており、アニメーション界における職人技として高く評価されています。