内転筋群のなかで唯一、膝関節を越えて下腿まで伸びているのが薄筋です。内転筋群の解剖学において、大内転筋や長内転筋が単関節筋として股関節の安定に特化しているのに対し、薄筋は二関節筋としての独自構造を備えています。
薄筋の起始停止を正確に把握することは、正確なアプローチを行うための第一歩です。起始は「恥骨結合のすぐ外側(恥骨下枝)」に位置し、大腿の内側をまっすぐ下方へと走行します。そして膝関節の内側を通過したのち、停止部である「脛骨粗面の内側(鵞足部)」へと付着します。
神経支配に目を向けると、薄筋の支配神経は「閉鎖神経(L2〜L3)」の前枝です。閉鎖神経の走行は大腰筋の内側縁から骨盤内へと降り、閉鎖孔を通って大腿内側へと進入します。この閉鎖神経が骨盤周囲の緊張や周囲組織の硬さによって圧迫を受けると、薄筋の緊張異常や内ももの筋出力低下を招く要因となります。