世間では「麻生氏の個人的な趣味」「単なる目立ちたがり」と片付けられがちですが、服飾外交の観点から分析すると、まったく別の側面が浮かび上がってきます。それは、「国際会議の場で欧米首脳に舐められないための冷徹なパワーゲーム」という視点です。
国際舞台における日本人は、欧米諸国の首脳(多くは身長185cm〜190cm超級)と比較して体格面でどうしても見劣りしがちです。歴代の日本の首相や財務相が、標準的なダークスーツを着て国際会議に並んだ際、メディアの写真では「集団に埋もれる小柄な東洋人」として処理されてしまう課題が常にありました。
麻生氏は身長175cm前後と、同世代の日本人男性としては大柄ですが、白人男性の体躯と対峙するには不足があります。そこで機能するのが、幅広のラペル、肩パッドをしっかり利かせた構築的なテーラリング、そして頭部の高さを稼ぎ視線を誘導するボルサリーノ帽です。G20モスクワ会議で見せたロングコートと帽子の組み合わせは、視覚的な横幅と高さを劇的に拡張し、物理的な体格差を帳消しにする効果を発揮していました。
「マフィア風」「ギャング風」と揶揄されるほどの強いインパクトは、国際報道において「真っ先にカメラを向けさせる」というPR上の実利を生みました。外交の場において「無害で存在感のない人間」として扱われることこそが最大の国益損失であると熟知しているからこその、徹底したシグナリング(意思表示)であったと分析できます。