多くのユーザーを悩ませるのが、イヤホンとヘッドホンの決定的な違いです。どちらも「耳元で音を鳴らす個人向け音響機器」である点に違いはありませんが、両者を分ける物理的境界線は明確に存在します。
音響機器メーカーの開発関係者によると、最大の差別化ポイントは「頭部支持具(ヘッドバンド等)の有無」と「ドライバーユニットの配置箇所」の2点に集約されます。ヘッドホンは頭頂部や後頭部を経由するバンドで耳全体を覆う、または耳介(外耳)にパッドを押し当てる構造を採用します。対してイヤホンは、耳介の窪み(耳甲介腔)や外耳道にドライバーユニットを直接納める構造を持っています。
また、表記の観点で見落とせないのがイヤーフォンとイヤホンの表記の違いです。放送業界や出版業界では、日本新聞協会の用語基準および国語審議会の外来語表記ルールに準拠し、原則として長音符を用いない「イヤホン」が標準表記と定められています。
一方、英語の発音「íərfoʊn」に忠実な記述を重んじる海外直輸入のオーディオブランドや専門誌では「イヤーフォン」と長音表記されるケースが散見されます。JIS規格の工業分野では、歴史的に「3音以上の言葉は末尾の長音を省略する(コンピュータ、プリンタなど)」という内規が長年存在したため、技術文書では一貫して「イヤホン」が定着してきたという実務的な背景があります。