ネット通販やカー用品店では、数千円で購入できる「フロントガラス補修DIYキット」が数多く販売されています。しかし、現場の自動車ガラス専門職人や検査員への取材で見えてきたのは、安易な自己流DIYによる悲惨な末路です。
フロントガラスのヒビに対する応急処置や市販レジンによる作業は、目に見えない微細なクラック内の空気を完全な真空状態にして脱泡し、UVレジンを隅々まで圧入する高度な技術を要します。市販の簡易注射器シリンジでは十分な脱泡ができず、レジン内部に微小な気泡や白濁を残したまま太陽光で硬化させてしまうケースが多発しています。
自動車検査員の証言によると、「ユーザーが自分でレジンを流し込んで固めたものの、気泡で光が屈折して検査機器や目視で引っかかり、車検当日に不合格を出さざるを得ない事例が非常に多い」といいます。一度硬化したレジンを再除去することは不可能なため、専門店に駆け込んでも「再リペア不可」と診断され、本来なら2万円程度のリペアで済んだ傷が、最終的に20万円近い全面交換へと化してしまうのが典型的な失敗パターンです。
飛び石を被弾した直後に行うべき唯一無二の正しい応急処置は、「傷口に市販のレジンを流し込むことではなく、透明なビニールテープや専用の保護シール(傷保護フィルム)を貼り、雨水・ホコリ・撥水剤の侵入を遮断して速やかにプロへ持ち込むこと」です。水分や油分が一度ヒビの深部に入り込むと、プロの施工であってもレジンの接着強度が著しく低下します。