「居酒屋で頼む生ビールと、缶で売っているラガービールは何が違うのか」という疑問は、日本のビール愛好家の間でも長年議論されてきました。結論から言えば、この2つは比較する軸が異なる概念です。
ラガーは前述の通り「下面発酵による醸造スタイル」を指すのに対し、生ビールは「製造工程で加熱殺菌(熱処理)を行っていないビール」を指す日本の酒税法規上の表示基準です。つまり、現代の日本で流通している大手メーカーの生ビールのほとんどは、製法上「生ビールであり、かつラガービール」に該当します。
日本のビール史を紐解くと、かつては品質保持のために熱処理を施したラガーが主流でした。その代表格がキリンラガービールの歴史です。1888年の誕生以来、熱処理による重厚な苦味と確かなコクで昭和の食卓を席巻しました。その後、1980〜90年代にかけて精密ろ過技術が飛躍的に進化し、酵母を加熱せずに除去できるようになると、市場の主流は一気に「熱処理なしの生ビール」へと移行しました。現在のキリンラガービールも生ビール仕立てですが、創業当時の味わいを忠実に受け継ぐ「クラシックラガー」では、今なお伝統の熱処理製法が守り続けられています。