シータの本名が明かされた際、最も大きな衝撃をもたらしたのがムスカの正体でした。彼自身が劇中の玉座の間で誇らしげに明かした本名は「ロムスカ・パロ・ウル・ラピュタ」。二人の名前を並べると、極めて緻密に設計された対比構造が浮かび上がります。
ムスカの名にある「パロ(Palo)」は、ラピュタ語で「従(サブ / 従属)」や「分家」を意味します。つまり、ムスカの名は「ラピュタの従属たる王(分家の王)」を指しています。かつて地上へ降り立ったラピュタ王家は、大きく二つの血統に分かれて歴史の闇に隠れました。
・本家(シータの家系):王の証である「飛行石」と、命を吹き込む「起動の言葉」を母から娘へと代々口伝で継承。
・分家(ムスカの家系):帝国の歴史や科学力を記した古文書・手帳を継承し、王権の復活と野心を世代を超えて保持。
ムスカがどれほど知識を蓄え、軍事力を掌握しようとも、飛行石そのものを起動する正統な血統(本家)の力を持たなかったのはこのためです。二人は遠い祖先を同じくする同族でありながら、光と影のように対極の道を歩んだ末裔同士でした。