『光る君へ』において、吉高由里子は紫式部の波乱に満ちた生涯を、10代の瑞々しい少女時代から『源氏物語』を執筆し終えた晩年に至るまで、ほぼ単独で演じ分けました。平安時代の貴族社会を生き抜いた女性の年輪を表現するにあたり、制作陣が特に心血を注いだのが「自然な老けメイク」です。
従来の大河ドラマでは、年齢を重ねた表現として単純な白髪カツラや濃い影を入れる手法が取られることも少なくありませんでした。しかし本作では、吉高由里子の繊細な表情筋の動きを損なわないよう、地毛を生かしながら部分的に白髪の毛束を精巧にブレンドし、こめかみや頭頂部の生え際に手作業で白髪を描き足す手法が採用されました。
現場スタッフによると、吉高由里子自身も「ただ老けて見せるのではなく、執筆に命を削り、時代を見つめ続けた紫式部の深みと疲労感を髪の一筋にまで宿したい」と語り、メイク担当者とミリ単位で毛束の配置をディスカッションしていたといいます。そのストイックな姿勢が、視聴者を惹きつける圧巻のリアリティを生み出しました。