5年生で習う漢字は193字。4年生の202字より数はやや少ない。しかし、文字の質が根底から変わる。「複雑」「構造」「暴動」「衛生」——。低学年で学んだ「犬」や「花」といった具体的なイメージが湧く漢字とは異なり、抽象的で概念的な言葉が一気に押し寄せてくるのだ。
日本の初等教育において、この5年生の時期は「概念の壁」と呼ばれる。画数も「議」(20画)や「護」(20画)のように一気に増え、視覚的な情報量が跳ね上がる。東北大学の川島隆太教授をはじめとする脳科学の研究でも、複雑な文字情報を処理する際の脳の負荷は、手書きの頻度や認識パターンに深く関与していることが指摘されている。ただ機械的にノートへ書き写すだけの勉強法では、脳が拒絶反応を起こすのも無理はない。文部科学省の学習指導要領が示すように、言葉の意味を深く理解し文章中で活用する力が求められるため、従来型の暗記術はここで限界を迎えるのだ。