宮城県白石市の名産品として知られる白石温麺の歴史は、今から約400年前の江戸時代初期にまで遡ります。白石城主・片倉小十郎公の城下町で、胃病を患う父親を案じた孝行息子・鈴木味右衛門が、旅の僧侶から教わった「油を使わずに小麦粉と塩水だけで練り上げる製法」で作った麺がその起源です。父親の胃病が快癒したことから、片倉公はその温かい孝行心を讃え、この麺を「温麺(うーめん)」と名付けました。
この由緒ある伝統を明治23年(1890年)の創業以来、正統に継承しながら現代の食卓へと届けているのがはたけなか製麺です。同社が作る白石温麺の最大の特長は、一般的なそうめんの製造工程で麺を延ばすために用いられる植物油を一切使用しないことにあります。油を使用しないため経年による油の酸化が起こらず、茹で上がりの湯水も澄んでおり、小麦本来の豊かな香りと澄んだ甘みがダイレクトに口いっぱいに広がります。
さらに特筆すべきは、約9cm(三寸)という独特の麺の短さです。一般的な乾麺が約20cm前後であるのに対し、約半分の長さで切り揃えられています。この短さは、小さな片手鍋でも麺が折れずにすっぽりと入り、吹きこぼれることなく均一に茹で上がるという抜群の調理性を生み出しています。蔵王山麓の清らかな伏流水と澄んだ空気に育まれた麺は、歴史の重みと現代の機能美が見事に融合した傑作といえます。