ネット上の掲示板やSNSでは、「グランドビルが壊されたら、明日にも超高層タワマンが建つ」「大手デベロッパーが一括買収して商業モールができる」といった噂が拡散されています。しかし、現場の権利関係と都市計画法上の規制を精査すると、そう単純な話ではない実態が浮かび上がってきます。
第一の盲点は、土地所有権と区分所有の複雑さです。昭和期の大型雑居ビルにありがちな事例として、フロアごとに権利者が分かれていたり、抵当権の設定や借地権が入り組んでいたりすることが挙げられます。全員の合意形成と退去交渉が完了するまでに数年単位の時間を要したように、解体後の事業計画策定にも綿密な調整が必要です。
第二の誤解は、「歓楽街機能の全面排除」という極端な言説です。名古屋市千種区今池は、都市計画上で商業地域に指定されており、高い容積率が認められている一方で、周辺にはパチンコホールやライブハウス、風俗関連店舗が密集する特有の地域調和が求められます。ファミリー向けレジデンスのみを建てても需要のミスマッチが起こるリスクがあり、デベロッパー各社は「1〜2階に飲食・商業テナントを配置し、中高層階を賃貸または分譲住宅とする複合型スキーム」を慎重に模索しているのが現実です。