迷信に翻弄された丙午、60年ぶりの巡り合わせが告げる新たな時代

迷信に翻弄された丙午、60年ぶりの巡り合わせが告げる新たな時代

迷信に翻弄された丙午、60年ぶりの巡り合わせが告げる新たな時代の概要と注目ポイントを一挙に解説しました。

丙午の迷信が庶民の意識へ決定的に定着した契機として、江戸時代前期に起きた放火未遂事件の当事者、八百屋お七の存在を外すことはできない。恋人に会いたい一心で自宅に火を放ち、鈴ヶ森刑場で露と消えた少女の物語は、当時の江戸の町で空前のセンセーションを巻き起こした。

この悲劇をいち早く文芸に昇華させたのが井原西鶴である。西鶴は浮世草子『好色五人女』の中でお七を丙午生まれとして描き、情熱のあまり暴走する悲劇のヒロイン像を世間に決定づけた。さらに歌舞伎狂言『伊達娘恋緋鹿子』などの演目によって舞台化され、人形浄瑠璃や錦絵を通じて大衆の脳裏に「丙午生まれの女=情熱的で恐ろしい」というイメージが刷り込まれていく。

当時のお七ブームは、現代で言えばNetflixやNHKオンデマンドで配信される実録犯罪ドキュメンタリーやメガヒットドラマのように、圧倒的な速度と熱量で消費された。メディアの娯楽化が民衆の恐怖心を煽り、いつしか虚構の物語が動かしがたい社会的リアリティへとすり替わっていった構図は、現代のフェイクニュースや情報過多の現象にも通底している。

井上 凛
Author

井上 凛

心身ともに健康で持続可能なライフスタイルをテーマに、最新のウェルネストレンドを発信中。