日光白根山は、群馬県と栃木県の県境にそびえる日光火山群の主峰です。周囲に遮るものが少ない独立峰に近い山容を持つため、天候変化の激しさは北アルプスや八ヶ岳などの主要山岳に匹敵します。登山者が最も注意すべきは、平野部の天気予報と山頂の気象の著しい乖離です。
天気が急変する最大の要因は、地理的条件にあります。関東平野から吹き上げる暖かく湿った空気と、日本海側から流れ込む冷涼な気流が、標高2,500mを超える日光白根山の山体で直接ぶつかり合います。これにより、麓が抜けるような青空であっても、山頂付近ではわずか30分足らずでガス(濃霧)が立ち込め、発達した積乱雲による局地的な雷雨や突風が発生します。
特に初夏から初秋にかけての午後は、強い日差しによって暖められた空気が急上昇し、激しい雷雲へと成長します。山頂一帯は森林限界を超えた高山帯で岩場が露出しており、雷の直撃を避ける遮蔽物がほぼ存在しません。午前中の早い時間帯に行動を終える計画が鉄則となるのは、この特異な気象特性が背景にあります。