ツバメの巣作り期間は、着工から完成まで通常約5日から8日前後です。親鳥のペアは一日に数百回も周辺の田んぼや河原、水たまりを往復し、驚くべき緻密さでマイホームを築き上げます。
主たる材料は、水分を含んだ柔らかな泥、枯れ草、動物の毛、そして藁(わら)の破片です。これらを自身の粘り気のある唾液と混ぜ合わせ、壁面に押し付けるようにして下から上へと半椀(はんわん)状に積み上げていきます。内側には羽毛や細かな植物の繊維が敷き詰められ、デリケートな卵や孵化したばかりのヒナを優しく保護する断熱マットの役割を果たします。
しかし、せっかく作り始めた巣を「わずか数日で放棄してしまう」ケースが散見されます。現場取材や愛好家の観察報告では、ツバメが巣作りを途中でやめる主な原因として以下の事態が確認されています。
もっとも多いのが「壁面の接着不良による落下」です。現代の住宅外壁には撥水加工やフッ素コーティングが施されていることが多く、泥を塗りつけても乾燥とともに自重で剥がれ落ちてしまいます。ツバメは泥が何度も剥落すると構造的欠陥を察知し、その場所を即座に諦めます。
また、作業中にカラスが電線に居座り威嚇してきた場合や、人間側が物干し竿を激しく振り回して追い払うなど「防犯上の危機」を感じた際も、リスクを避けて別の営巣ポイントへ移動します。巣作り半ばでの放棄は、親鳥が我が子の命を守るために下す極めて冷静なリスク管理の表れです。