日本の英語教育で長く親しまれてきた「What nationality are you?(あなたの国籍は何ですか?)」という表現。実はこれ、ネイティブスピーカーが日常の雑談で使うことは滅多にない。理由を一言で言えば、硬すぎるのだ。パスポートコントロールや行政手続きの窓口で問われるような官僚的な響きがあり、カフェやパーティーで口にすると「なぜ今、私の法的ステータスを詰問されているのだろう」と相手を警戒させてしまう。
さらに深刻なのは、移民国家や多文化社会における「国籍」と「見た目」のズレだ。ロンドンやニューヨークで生まれ育った生粋の市民に対し、アジア系やアフリカ系という外見だけで「What nationality are you?」と尋ねると、「自分はこの国の人だと認められていない」という印象を与えかねない。些細な一言が、思わぬ摩擦を生む危険を秘めている。