英雄か虚像か?ナポレオンの名画に隠されたプロパガンダの真実

英雄か虚像か?ナポレオンの名画に隠されたプロパガンダの真実

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ジャック=ルイ・ダヴィッドが手がけた『サン=ベルナール峠を越えるボナパルト』は、歴史上もっとも有名な肖像画の一つだ。荒れ狂う風にたなびく赤いマント、前足を高々と上げる駿馬、そして冷静沈着な眼差しで観る者を射すナポレオン。しかし、現実のアルプス越えはこれほど華々しいものでは決してなかった。

実際のボナパルトは、悪天候の中で寒さに震え、泥にまみれながら安全なラバ(ロバと馬の交配種)の背に揺られて山道を進んだ。ダヴィッド自身、ナポレオン本人から「肖像画に必要なのは顔の凹凸の正確さではなく、人物の天才性を描くことだ」と指示され、乗馬ポーズのモデルすら本人ではなく息子に務めさせたと伝えられる。

この虚飾に真っ向から異を唱えたのが、19世紀半ばに活躍した画家ポール・ドラローシュだ。ドラローシュの描いた作品では、疲れ果てた表情のナポレオンが、地味な外套を羽織り、ガイドに引かれたラバに乗って過酷な雪山を黙々と登る。英雄の虚像を剥ぎ取り、泥臭い人間像をカンバスに焼き付けたこの対比は、政治的絵画がいかに真実を美化してきたかを雄弁に物語る。

山田 真由
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山田 真由

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