フルトンのキャリアにおいて唯一にして最大の転換点となったのが、2026年7月25日に東京・有明アリーナで行われた井上尚弥とのWBC・WBO世界スーパーバンタム級タイトルマッチです。当時、パウンド・フォー・パウンド(P4P)上位の井上に対し、体格とディフェンス力で勝るフルトンが競り勝つと予想する海外アナリストも少なくありませんでした。
しかし、結果は8回1分14秒TKO負け。フルトンは王座から陥落し、キャリア初の敗北を喫しました。この歴史的一戦における勝敗の分かれ目と、現場で露呈した戦術的敗因は主に3点に集約されます。
1. ジャブの差し合いにおける圧倒的なスピード差
フルトンの生命線は、179cmの長いリーチから繰り出される左ジャブです。しかし井上は、立ち上がりからそのジャブの引き際を狙い撃つ鋭いリターンジャブとステップインを披露。自慢の左を封じられたフルトンは、序盤から距離の主導権を完全に握られました。
2. 執拗な左ボディジャブによるガードの誘導
井上陣営の周到なゲームプランが光ったのが、フルトンの腹部へ突き刺す強烈な左ボディジャブでした。この布石によってフルトンの意識と左ガードがわずかに下がり、8ラウンドに見せた「左ボディフェイントからの右ストレート」という決定打へと繋がりました。
3. アウェー環境と「相手のパンチ力への警戒」が生んだ手数の減少
試合後の公式会見や米メディアのインタビューにおいて、フルトン自身も「井上のスピードとタイミングは想定以上だった」と素直に認めています。一撃の破壊力を恐れるあまり持ち前の小刻みなステップと手数が影を潜め、完全に後手に回ってしまったことが致命傷となりました。