SNSや飼育コミュニティで毎年多数報告される悲痛な叫びが、「昨日まで元気に葉を食べていたのに、急にぐったりして動かなくなった」というトラブルです。このクロアゲハの幼虫 突然死ぬ理由には、飼育者が無自覚に侵している2大要因があります。
第一の要因は、市販の柑橘苗木に残留している「浸透移行性殺虫剤(ネオニコチノイド系等)」です。園芸店やホームセンターで美しく管理されている柑橘類の鉢植えは、害虫被害を防ぐために根から吸い上げさせて葉全体に行き渡らせる農薬が施されているケースが一般的です。購入した苗木の葉を洗って与えたとしても、葉の組織内部に薬剤成分が浸透しているため、幼虫は数口食べただけで神経毒に侵され、激しく身もだえして緑色の体液を吐き戻しながら絶命します。「無農薬であることが確認できない市販苗木の葉は絶対に与えない」ことが鉄則です。
第二の要因が、自然界の掟ともいえる寄生バチの被害と対策です。野外の庭木から捕獲してきた終齢幼虫の飼育において、無事にサナギになれる確率は決して高くありません。昆虫調査の現場データによると、野外に露出したアゲハ幼虫の50%〜80%以上が寄生バエやアオムシサムライコマユバチに寄生されているという冷酷な現実があります。
寄生された幼虫は、終齢期や前蛹の段階になって体内で寄生者の幼虫が育ちきり、内臓を食い破られて死亡します。前蛹の脇から無数の黄色い繭が出てきたり、サナギからハエの幼虫(ウジ)が糸を引いて垂れ下がってきたりする惨劇は、飼育者に大きなショックを与えます。この被害を100%防ぐ唯一の防衛策は、「葉の裏に産み付けられた卵の段階で採取し、防虫ネットで囲った室内環境で孵化させる」ことです。