圧倒的な存在感で作品の屋台骨を支えるのは、日本を代表する実力派女優の中谷美紀だ。娘を理不尽に奪われた悲痛な過去を抱え、犯人への憎悪と刑事としての使命感の間で苦悩する倉澤樹の深層心理を、呼吸ひとつ、瞳の揺らぎひとつで表現してみせた。
対峙する貴志ルオト役には、アイドルとしての華やかさを完全に封印した菊池風磨。狂気と純粋さが同居する妖艶な殺人犯を演じきり、役者としての覚醒を強く印象づけた。撮影現場では、カメラが回っていない時間でも緊張感が漂い、互いの存在感を意識した静かな対立が続いていたという。この二人の壮絶な化学反応こそが、本作を至高の心理サスペンスへと押し上げた最大の要因だ。