エレベーターの扉が開いた瞬間、タイムスリップしたかのような錯覚を覚える。ビル6階に広がる「マルカンビル大食堂」は、かつて全国の地方都市にあったデパート食堂の熱気を今に伝える奇跡の空間だ。500席を超える大ホールを見渡せば、食券を握りしめた家族連れや旅行者の笑顔が弾けている。
ここで誰もが注文するのが、花巻が全国に誇るご当地グルメ「ナポリカツ」と、巻き上げ高さ20センチ以上に及ぶ「10段ソフトクリーム」だ。割り箸を使って器用に食べるのが地元流。昭和の温もりを残した大衆食堂の活気は、平成の閉店危機を市民の愛で見事に乗り越え、いまや全国から客を呼び寄せる観光の要となっている。