共働き世帯や単身者の強い味方となるのが厚揚げと小松菜作り置きですが、ここにも科学的な落とし穴が存在します。豆腐製品である厚揚げは水分活性が高く、本来は傷みやすい食材の代表格です。さらに、小松菜を加熱したまま放置すると、自身の余熱で変色し、鮮やかな緑色が失われて褐色化してしまいます。
3日間の冷蔵保存を前提とした作り置きを成功させるための鉄則は、「急冷処理」と「煮汁の濃度の事前調整」にあります。
加熱調理を終えた鍋をそのまま常温放置するのは最も危険です。菌が繁殖しやすい30℃〜40℃の温度帯を素早く通過させるため、出来上がった保存容器の底を氷水に数分間当てて一気に熱を取り去ります。この急冷工程を挟むことで、小松菜のクロロフィル色素の分解が食い止められ、3日後でも驚くほど美しい発色を維持できます。
また、保存期間中に小松菜から水分が少しずつ染み出して煮汁が薄まることを見越し、作り置き用途の場合は醤油と出汁の濃度を通常よりも10%〜15%程度高めに設計するのがプロの現場の知恵です。煮上がりに鰹節パックを1袋投入して和えておくと、鰹節が余分な煮汁を抱き込み、厚揚げと小松菜に旨味の膜となって密着し続けるため、時間が経ってもぼやけない力強い味わいが持続します。