明治維新を経て華族の頂点に立った近衛家は、近代政治の荒波に直接躍り出ることとなる。その象徴が、3度にわたり内閣総理大臣を務めた近衛文麿だ。容姿端麗にして最高級の貴族という血統は、政情不安に揺れる国民から絶大な支持を集めた。
しかし、彼を待ち受けていたのは日中戦争の長期化と太平洋戦争への傾斜という苛酷な運命だった。革新貴族として理想の国家像を追求しながらも、軍部の暴走を食い止められず軍国主義の奔流に呑み込まれていく。終戦直後の自決に至る彼の足跡は、名門の宿命と近代日本の悲劇が交錯した象徴的な歴史の断章として語り継がれている。