井上順孝氏の業績は、単著の執筆にとどまりません。膨大な宗教現象を社会の共有財産としてアーカイビングする「知のインフラ整備」において、比類なきリーダーシップを発揮しました。その象徴が、弘文堂から刊行された『現代宗教事典』の編纂です。国内外の宗教事象を網羅したこの事典は、研究者のみならず報道機関や法曹関係者にとっても不可欠なレファレンスとなっています。
さらに特筆すべきは、公益財団法人国際宗教研究所内に設立された「宗教情報リサーチセンター(CIRC)」での取り組みです。井上氏は初代センター長として、宗教に関する客観的データの収集・整理と一般公開を推進しました。メディアが宗教報道を行う際、根拠の確かなファクトチェックを行える環境を整えた功績は、情報化社会における極めて大きな社会貢献といえます。