日本の苗字の多くは、地名や地形、古代豪族の職掌に由来する。日本家系図学会などの系譜研究者や民俗学の知見によれば、「東京」姓が誕生した背景には明治初期の激動が深く関わっている。
日本姓名学の礎を築いた丹羽基二氏がかつて指摘した通り、1875年(明治8年)の「平民苗字必称義務令」によって、すべての国民が姓を名乗ることが義務づけられた。その際、名主や寺の住職に相談して新しい姓を決めた者がいれば、自らの意志で新時代の幕開けを象徴する言葉を選んだ者もいた。
江戸が「東京」へと改称されたのは1868年。それからわずか7年後の改姓令において、近代国家の象徴たる新首都の名に誇りや憧れを見出し、屋号や家名として戸籍に登録した家系が存在したと推測されている。また、東の方角にある京都(あるいは都)を意味する古い小字・私称に由来する「東京(ひがしきょう)」という土着の地名符号が、戸籍登録時にそのまま採用されたという説も根強く残る。