市原さんの人生を語る上で欠かせないのが、俳優座の同期であり演出家として活躍した夫・塩見哲(しおみ さとる)氏の存在です。1961年に結婚した二人は、お互いを最も理解し合う同志として50年以上にわたり深い絆で結ばれていました。
おしどり夫婦として知られた二人ですが、家庭には子供がいませんでした。市原さんは生前のインタビューや自著の中で、過去に2度の妊娠を経験したものの、いずれも流産してしまった悲痛な過去を明かしています。役者としての過密スケジュールや身体への負担が重なったこともあり、子供を授かることができなかった悔しさに長年苦しんだといいます。
そんな市原さんを救ったのが夫の塩見氏でした。「悦子、子供はいなくてもいいじゃないか。二人で楽しく生きていこう」と励まし続け、市原さんはその言葉に支えられて女優業に没頭することができました。2014年4月に塩見氏が肺炎のため80歳で先立った際、市原さんは激しいショックを受け、精神的にも大きな孤独を抱えることとなりましたが、夫への感謝の思いは生涯消えることはありませんでした。