かつて茶の湯とともに発展してきた上生菓子は、いまや茶室という閉ざされた空間を軽やかに飛び出しつつある。茶道の精神である「一期一会」の美意識を根底に宿しながらも、現代のペアリングカルチャーと大胆に融合。濃厚な抹茶だけでなく、シングルオリジンの浅煎り珈琲やナチュールワインとの調和をも見据えた味覚設計が試みられている。
この革新的なアプローチには、全国和菓子協会をはじめとする製菓業界全体が熱い視線を注ぐ。伝統を守るための保守主義に陥りがちな業界構造の中で、格式を保ちながらグローバルな味覚へ橋を架ける試みは極めて稀有だ。「古典を知り尽くしているからこそ、最も先鋭的な破壊ができる」と業界関係者は語る。その実験精神は、停滞する地方和菓子界の希望の光になりつつある。