清香園が位置するさいたま市北区盆栽町は、1923年の関東大震災を契機に東京・本所周辺の植木職人や盆栽師が集団移住して形成された歴史ある地区です。その中でも清香園は、嘉永年間(1850年代)に江戸で創業したルーツを持つ屈指の老舗園です。清香園と盆栽町の歴史概要を紐解くと、伝統技術を頑なに守る職人気質の園が多い中で、清香園は時代ごとの生活様式に合わせた柔軟な進化を遂げてきた稀有な存在であることが分かります。
その最大の変革期となったのが、五代目を継承した山田香織氏の登場です。山田氏は伝統的な松柏(しょうはく)盆栽の厳格な樹形美を尊重しながらも、現代のマンションや洋室のリビングに映える「彩花盆栽」という新ジャンルを切り拓きました。四季折々の花、野草、苔をひとつの鉢の中に風景として描き出すスタイルは、インテリア感度の高い層の心を捉え、かつての「盆栽離れ」を鮮やかに逆転させました。
さらに、山田香織氏がNHK『趣味の園芸』をはじめとする各種メディアで分かりやすく親しみやすい解説を長年続けたことで、園芸ビギナーの参入障壁が一気に引き下げられました。格式の高さと親しみやすさの絶妙なバランスこそが、清香園が世代を超えて支持され続ける最大の要因です。