結婚からわずか3年後の1996年、小日向文世が42歳のときに大きな転機が訪れます。生活のすべてであった「オンシアター自由劇場」が解散。映像の世界ではほぼ無名だった小日向文世には、定期的な出演オファーがほとんど届かない苦境に陥りました。
当時、すでに長男が誕生しており、家族を養うための生活費は底をついていました。民放特番やインタビューの手記で本人が赤裸々に告白している通り、生活費を工面するためにクレジットカードのキャッシングを重ね、借金総額は数百万円規模にまで膨らんでいました。当時の心境について、小日向文世は「通帳の残高がゼロになり、どうやって来月の生活費を払えばいいのか途方に暮れていた」と振り返っています。
通常であれば家庭崩壊に直面してもおかしくない危機的状況下で、妻は取り乱すことなく家計をやりくりし、夫の役者としての才能を疑いませんでした。決して夫を責め立てず、家庭内を常に明るく保ち続けたといいます。この暗闇から抜け出すきっかけとなったのが、2001年放送のフジテレビ系月9ドラマ『HERO』(木村拓哉主演)への大抜擢でした。末次事務官役で独特の愛嬌と卓越したリアリズムを見せた小日向文世は、当時47歳にして全国的なブレイクを果たし、積み重なった借金を一気に完済することに成功したのです。