日生学園がこれほどまでに世間の耳目を集めた最大の要因は、現代の教育基準からは想像もつかない過酷な校則と規律にありました。学園の根底にあったのは、創設者が提唱した「心行(しんぎょう)」と呼ばれる徹底的な自己否定と精神鍛錬の思想です。
象徴的だったのが、テレビ取材でも公開され日本中を唖然とさせた日生学園の素手によるトイレ掃除です。生徒たちは便器用ブラシやゴム手袋を使うことを一切許されず、素手と布切れ一枚だけで黄ばみや汚れのこびりついた便器の内側まで磨き上げさせられました。しかも静かに掃除するのではなく、全員が腹の底から「あー!」「磨けー!」と大声で絶叫しながら、床や便器に這いつくばって一心不乱に手を動かすのです。理性を麻痺させ、雑念を払って無条件の服従と自己犠牲を植え付けるための儀式的な訓練でした。
生徒の生活スケジュールは、分刻みで徹底的に管理されていました。
- 午前4時30分起床:サイレンとともに飛び起き、寝具を1分以内に完璧な角型に整頓。
- 早朝マラソンと全力疾走:校庭や山道を全員で怒号のような掛け声を上げながら疾走。列を乱した者には容赦ない連座責任。
- 徹底した情報遮断:テレビ、ラジオ、新聞、雑誌、菓子類、私服、現金の所持は全面禁止。外部との私信(手紙)も検閲の対象。
- 絶対的な縦社会:下級生は上級生に対して直立不動で「押忍!」と叫ぶ挨拶を義務付けられ、逆らうことは許されない絶対君主制。
当時の日生学園のスパルタ教育の実態は、非行や不登校、学力不振に悩む保護者たちから「性根を叩き直してくれる最後の砦」として熱狂的に支持された側面がありました。しかしその実態は、個人の尊厳を極限まで削ぎ落とし、集団ヒステリーに近い極限状態を強いる過酷な収容環境だったと言わざるを得ません。