日本の近代政治史において、総理大臣の血統は単に一家族に留まらず、政界・財界・芸能界を網の目のように結ぶ巨大な閨閥(けいばつ)を形成してきました。祖父から孫へと受け継がれる血筋は、政治権力の継承劇であると同時に、文化的なステータスの再生産でもあります。
政界における最も象徴的な例が、第56・57代首相の岸信介と、その孫である第90・96〜98代首相の安倍晋三の血縁関係です。岸信介の長女・洋子が安倍晋太郎(元外相)に嫁ぎ、その次男として生まれた安倍晋三は、祖父の政治的DNAを最も色濃く受け継いだ指導者として長期政権を築きました。なお、第61〜63代首相の佐藤栄作は岸信介の実弟であり、安倍晋三にとっては「大叔父」にあたるという極めて強固な政治エリート家系です。
また、第92代首相を務めた麻生太郎は、戦後日本の骨格を築いた第45・48〜51代首相・吉田茂の孫にあたります。吉田茂の三女・和子が麻生太賀吉(麻生セメント会長)に嫁ぎ、長男として生まれたのが麻生太郎です。さらに麻生太郎の妻・千賀子は第70代首相・鈴木善幸の三女であり、吉田家・麻生家・鈴木家という複数の首相家系が重層的に交差しています。