インターネット上の掲示板やSNSでは、長年にわたり「大東建託の壁は紙のように薄い」「隣のくしゃみやスマホのバイブ音まで丸聞こえ」といった極端な言説が飛び交っています。しかし、不動産・建築の客観的事実に基づけば、壁が物理的な紙で作られているはずもありません。なぜこれほどまでに騒音の噂が定着し、実際に苦情の手紙が飛び交うのでしょうか。
背景には、同社が1990年代から2000年代初頭にかけて大量供給した初期の軽量鉄骨造アパートの構造的特徴があります。当時の建築基準において界壁(隣戸との境の壁)に求められていた遮音性能は現在ほど高くなく、石膏ボードと軽量鉄骨の間に入っているグラスウールの密度や施工品質にばらつきが存在しました。また、木造ツーバイフォー工法や軽量鉄骨造は、鉄筋コンクリート(RC)造に比べて建物自体の質量が小さいため、空気伝播音(話し声やテレビの音)は防げても、床を伝わる「重量床衝撃音(足音や飛び跳ねる音)」が骨組みを伝って遠くまで響きやすい物理的弱点を抱えていました。
大東建託側もこの課題を放置していたわけではありません。2010年代以降、同社は高遮音床システム「D-tone(ディートーン)」を標準採用し、上階からの衝撃音を従来の約2分の1に低減するなど、性能向上を公式発表資料などで示しています。近年の新築物件(木造ツーバイフォーの「ノイエクラッセ」シリーズ等)では、一般的な賃貸住宅と同等以上の遮音性能が確保されています。
それにもかかわらず騒音トラブルが後を絶たない理由の一つに、地方都市における圧倒的な管理戸数シェアが挙げられます。地方のロードサイドや郊外エリアでは「賃貸を探すと選択肢の過半数が大東建託の物件」という地域も少なくありません。母数が突出して大きいため、結果としてネット上に投稿されるトラブル相談の総数も多くなり、「騒音アパート」というネガティブなバイアスが固定化されやすい側面があるのです。