白老のベーカリーが放つ唯一無二の存在感は、店主たちの妥協なき職人魂と白老の澄んだ水・空気から生まれています。なかでも訪れる者を唸らせてやまない2大名店と伝説的ルーツを深掘りします。
給料を注ぎ込んだ飽くなき探求心|ブーランジェリー ニシオ
地元住民から絶大な信頼を寄せられているのが「ブーランジェリー ニシオ」です。店主の西尾氏は修業時代、支給される給料のほぼ全額をパンの専門資料購入と全国の名店食べ歩きに注ぎ込み、技術と味覚を極限まで研ぎ澄ませたという生粋のパン職人。高校の同級生であった妻の出身地が白老町だった縁から、30歳という若さでこの地に独立開業を果たしました。
店頭に並ぶ品々のなかで不動の人気No.1を誇るのがあずきブレッドです。しっとりと吸い付くような高加水生地のキメ細やかさと、惜しみなく巻き込まれた小豆の上品な甘みが絶妙なコントラストを描き出します。日常の食卓を豊かに彩る食パンや惣菜パンも充実しており、近隣住民にとっては「買い逃すと週末が始まらない」と言わしめるほどのソウルフードとなっています。
3種の天然酵母が織りなす薪窯の息吹|マルコーブ(Malcove)
白老の自然林に溶け込むように佇む「マルコーブ」は、まさに白老天然酵母パンの真髄を味わえる隠れ家です。ここでは日によって約40種類もの多彩なパンが焼き上げられますが、驚くべきはその緻密な製法にあります。パンの種類や目指す食感に応じて3種類の天然酵母を厳密に使い分けており、粉の風味を最大限に引き出しています。
店内のプライスカードには、商品ごとの特徴だけでなく使用原材料が明瞭に記されており、アレルギーや健康志向に配慮する顧客への真摯な姿勢が伺えます。石窯・薪窯特有のバリッと力強いクラスト(外皮)と、噛むほどに甘みと心地よい酸味が広がるクラム(内相)の調和は、一口で職人の丁寧な仕事を感じ取ることができます。
伝説のハード系カルチャーと「ラフィ」の記憶
白老のパンを語るうえで避けて通れないのが、かつて全国のハード系パン愛好家を震撼させた「ブーランジェリー ラフィ」の存在感です。ブーランジェリーラフィ評判の核となっていたのは、薪窯で限界まで焼き色を付けたカンパーニュや、野趣あふれるハード系パンの圧倒的な力強さでした。その妥協なきベイクスタイルは現在も白老の食文化に深い影響を与えており、白老ハード系パンを愛好するファン層を地域に定着させる決定的な礎となりました。