キメラアントの王直属護衛軍において、プフの抱く忠誠心はピトーやユピーとは決定的に異なる性質を持っていました。ネフェルピトーは「王の望みを叶えること」、モントゥトゥユピーは「王を守る盾となること」を行動原理としていましたが、シャウアプフの忠誠は「王が絶対君主として世界を支配すること」という、自らのイデオロギーに縛られていたのです。
メルエムが軍儀の棋士・コムギとの邂逅を通じて「個」や「人間的な慈愛」に目覚めていくプロセスは、プフにとって耐え難い「王の堕落」に他なりませんでした。自らの理想とする完璧な王を守るためなら、王本人の意志に背いてでもコムギを亡き者にしようと謀略を巡らせる姿は、まさに忠誠が純粋すぎるがゆえに狂気へと昇華した悲劇の構図でした。
作中でプフが激しい感情の昂ぶりに襲われるたび、携えたバイオリンを激しく掻き鳴らし、大粒の涙を流す奇行は、王への至高の愛と、思い通りにいかない現実との間で引き裂かれた精神状態を象徴する名描写として語り継がれています。