おとり物件とは、不動産ポータルサイトや店頭の募集図面において、「実際には入居・契約できないにもかかわらず、顧客を店舗に呼び寄せる目的で掲載され続けている虚偽の広告物件」を指します。業界内では「釣り物件」とも呼ばれ、法律および業界規約によって固く禁じられている明確なルール違反です。
具体的には、次の3つのパターンに分類されます。
- 実在しない架空物件:住所や建物名が実在しない、あるいは部屋番号が存在しない完全なフェイク広告。
- 実在するが取引できない物件:オーナーに貸す意思がない、賃貸募集を停止している、あるいは自社では取り扱えない物件を無断転載しているケース。
- すでに成約済みの物件:すでに別の人と賃貸契約が締結され募集が終了しているにもかかわらず、好条件だからと意図的に掲載を取り下げず放置しているケース。
賃貸仲介ビジネスは、部屋を探している顧客を自社の店舗に呼び込み、契約を成立させてオーナーや入居者から仲介手数料(賃料の0.5〜1か月分+消費税)を得る「客付け」モデルが主流です。ポータルサイトに一般的な相場の物件ばかりを並べていても、反響(問い合わせ)は増えません。そこで、他社を圧倒するような「破格の家賃」「敷金・礼金ゼロ」「デザイナーズリノベーション」といった甘い罠を仕掛け、何としても自社のデスクに座らせようとする誘惑に負ける業者が後を絶たないのが現状です。
首都圏の賃貸仲介店で元店長を務めていた関係者は、次のように現場の実情を明かします。
「反響数が営業ノルマに直結するため、すでに申込が入った人気物件を『更新を忘れていた』と言い訳できるようにしながら、意図的に2〜3週間ポータル上に残しておく手口は日常茶飯事でした。『まずは客を店に呼べ、座らせてしまえば営業トークでいくらでも別の部屋にすり替えられる』というのが、売上に追われる現場の共通認識になっていたのです」