インターネット上の育児コミュニティでは、落ち着きのない子に関する極端な情報が氾濫しています。特に多く見られる2大誤解を正しく解体しておく必要があります。
誤解1:「成長すれば自然に治るから、小学校高学年まで放置してよい」
「男の子なんてそのうち落ち着く」という昔ながらのアドバイスを鵜呑みにして放置することは危険を孕んでいます。確かに脳の前頭前野の発達に伴い、目に見える身体の多動性(走り回るなど)は小学校中学年から思春期にかけて落ち着く傾向があります。しかし、内面的な不注意や衝動性は残りやすく、それまでに「怒られ続けた経験」によって自尊感情がボロボロになってしまうと、二次障害(うつ、不安障害、強い非行・反抗)として深刻化します。必要なのは自然治癒を待つことではなく、早期に適切な環境調整を行うことです。
誤解2:「病院に行くとすぐ薬漬けにされて人格が変わってしまう」
小児精神科や発達外来の受診をためらう保護者の大半が、ADHD治療薬に対する過度な恐怖心を抱いています。現代の小児医療において、初診からいきなり薬物療法を開始することはまずありません。第一選択はあくまで家庭や学校での「環境調整」と「行動療法」です。
薬物療法が検討されるのは、環境調整を行っても本人の衝動性が抑えられず、日常的に大怪我のリスクがある場合や、著しい集団不適応によって本人が強い苦痛を感じている場合に限られます。専門医の指導のもとで処方される中枢神経刺激薬等は、脳内のドーパミンやノルアドレナリンの働きを調整し、「自分の意志でブレーキを踏みやすくする補助輪」として機能するものであり、人格を変質させるものではありません。