オーディションの場に足を踏み入れた瞬間から、張り詰めた空気は異様だったという。当時、すでに子役出身の実力派として頭角を現しつつあった宮野真守だが、『週刊少年ジャンプ』随一のダークヒーローである夜神月のオーディションには、業界中の名だたる実力者が集結していた。誰もが「完全無欠のエリート」を演じようと声を張るなか、宮野が選択したアプローチは真逆のものだった。
冷徹さの奥底に潜む、脆く純粋なエゴイズム。彼は単に悪役然としたトーンを作るのではなく、神を自称する青年が抱く「狂信的な正義感」を生々しい息遣いで表現した。荒木哲郎監督をはじめとする制作陣の胸を射抜いたのは、整った芝居ではなく、感情が破綻するギリギリの危うさだったという。合格の報せを受けた宮野自身、歓喜とともに背筋が凍るほどの重圧を背負ったと後に述懐している。