メンタルヘルス休職をめぐるトラブルの多くは、「個人の感情的な対応」と「就業規則の不備」から生じます。仮病を疑うあまり、上司が個人的に「本当に病気なのか」「仮病ではないのか」と問い詰めたり、SNSの投稿を理由に一方的な懲戒解雇を下したりすれば、不当解雇やパワーハラスメントとして企業側が法的に敗訴するリスクが極めて高くなります。
組織としてトラブルを回避するための具体的な実務ポイントは3点に集約されます。
第1に、就業規則の改定と厳格な運用です。「休職命令の発令要件」「会社の指定する医師(産業医等)の受診命令権」「休職中の生活規律および報告義務」「復職判定の基準」を就業規則に明文化しておく必要があります。
第2に、復職プロセスの客観化です。主治医が「復職可能」の診断書を出した場合でも、それは「日常生活が送れるレベル」を指していることが多々あります。「所定労働時間を週5日継続して勤務できるか」「業務に必要な集中力が回復しているか」を判断基準とし、リハビリ出社や段階的復帰制度を活用して再発とトラブルを未然に防ぎます。
第3に、残された周囲の社員への手厚いフォローです。休職者の業務を引き継いだ同僚に対して正当な人事評価や業務量の調整を行わないと、真面目な社員がバーンアウトし、組織崩壊を招きます。休職者の真偽追求にエネルギーを浪費するのではなく、組織全体の公平性を担保する制度運用へ舵を切ることが最優先事項です。