ことの発端は、島倉が信じた人物による裏切りだった。当時、信頼していた目上の人物や知人のために印鑑を預け、保証人となったことで、当時の金額で2億4000万円という莫大な借金が彼女の肩にのしかかった。現代の貨幣価値に換算すれば十数億円にも相当する絶望的な数字である。
歌手生命どころか人生そのものが破滅に瀕していた島倉の前に現れた細木は、まさに「裏社会に通じたフィクサー」としての手腕を発揮する。強硬な交渉で金主たちを抑え込み、返済計画を一本化。島倉を全国の地方公演へ精力的にドサ回りさせることで、着実に借金を減額させていった。
だが、その代償は大きかった。ステージで歌い続ける島倉のギャラの大半は返済に充てられ、歌姫としての自由は完全に奪われた。命を救われた感謝はあるものの、自身の歌声が金儲けの道具として扱われる現実に、島倉の心は次第にすり減っていったのである。