この現象の歴史は途方もなく古い。紀元前3世紀、古代エジプトのアレクサンドリアで活躍した天才発明家クテシビオスは、水時計や自動揚水装置にサイフォンの構造を巧みに組み込んでいた。動力のない時代、液体が勝手に坂を越える様は、まさに魔法そのものに見えたに違いない。
時代が下り17世紀に入ると、流体力学の父として名高いブレーズ・パスカルが圧力の本質を数学的に解明する。パスカルは水銀や水を用いた大掛かりな実験を展開し、大気が及ぼす見えない力と液柱の釣り合いを証明してみせた。クテシビオスの直感的な技術は、パスカルの手によって厳密な物理学の土台へと昇華されたのである。