彼女の生を語る上で、伝説的サックス奏者である夫・阿部薫の存在を切り離すことはできない。1970年代の狂騒の中、互いの才能と生命力を削り削られながら駆け抜けた二人の関係性は、今なお多くの表現者を魅了してやまない。しかし、過剰にドラマチックに語られがちなその私生活の陰で、彼女は冷徹な観察眼を持ち続けていた。
私生活での混乱や破滅的な日常すらも、彼女は文学の触媒へと変換していった。自らの孤独や苦痛を客観視し、物語というフィクションの器に流し込む作業。その過酷な作業の果てに生み出された作品群だからこそ、単なる流行に流されないカルトフィクションとしての強度を保ち続けているのだ。狂気と理知の狭間で揺れ動いた彼女の真実の姿が、作品の行間から立ち上ってくる。