「健さんは、どんなに寒い現場でも絶対にロケバスに入り込んで暖を取るような真似はしなかった」。小林稔侍が後に明かしたこの独占秘話は、高倉健という男の不屈のプロ意識を物語る象徴的なエピソードだ。真冬の吹雪が吹き荒れる北海道の撮影現場で、寒さに震える若手スタッフや共演者を気遣い、自分自身もストーブから離れた場所でじっと出番を待ち続けたという。
また、語られなかった未公開エピソードとして、撮影期間中に高倉が小林だけにこっそり手渡した一筆のメモがある。そこには簡潔に「男の顔は履歴書だ」と書かれていた。主演と脇役という立場を超え、同じ映画人として対等に向き合った高倉の深い愛情。盟友だけが知るその不屈の映画魂は、小林の俳優人生における揺るぎない指針となった。日本映画界を揺るがした男たちの真実が、そこには確かに存在していた。