日本における中国の工作活動を語る上で、決して風化させてはならないのが2004年に発生した上海総領事館員自殺事件です。当時、上海の日本総領事館で暗号通信を担当していた専門職の外交官(当時46歳)が、現地で自ら命を絶ちました。
後に明らかになった遺書や日本政府の調査によると、この外交官は上海市内のカラオケ店で知り合った中国人女性と親密な関係になり、その直後から中国公安当局の執拗な接触と脅迫を受けていました。中国側は女性の身柄拘束などを盾に取り、日本政府の最重要機密である「暗号電報のシステムコード」や公電の内容を漏洩するよう執拗に迫ったと記録されています。
外交官は祖国を裏切って暗号機密を渡すか、自らの破滅かの二者択一を迫られ、最後まで職務の守秘義務を守り抜くために死を選択しました。この事件は、ハニートラップが単なるスキャンダルではなく、人の命と国家の安全保障を直接脅かす冷酷非情な国家工作であることを日本社会に決定づけました。