超音波骨折治療法(LIPUS = Low Intensity Pulsed Ultrasound)は、極めて出力の低い超音波を断続的(パルス状)に骨折部へ照射する治療技術です。健康診断などで用いられるエコー検査と同等レベルの安全な超音波を用いますが、骨の修復プロセスに直接働きかける点が大きく異なります。
通常、骨が折れると体内では損傷部位に炎症反応が起こり、仮骨(かこつ)と呼ばれる未熟な骨組織が作られ、時間をかけて硬い骨へと再構築されていきます。LIPUSの超音波が持つ微弱な音響圧力波(物理的刺激)が患部に届くと、骨組織に存在する受容体が刺激を感知し、プロスタグランジンE2(PGE2)やトランスフォーミング増殖因子-β(TGF-β)などの骨形成シグナル伝達物質の分泌が急増します。これにより、骨芽細胞の増殖・分化が活性化し、新生血管の形成が強力に後押しされるのです。
国内外の多数の二重盲検比較臨床試験において、新鮮骨折(受傷間もない骨折)に対するLIPUSの併用により、骨癒合までの期間が約38%〜40%短縮されることが実証されています。例えば、通常であれば骨がくっつくまでに100日(約3ヶ月強)を要するすねの骨(脛骨)骨折の場合、約60日(約2ヶ月)前後まで治癒期間を短縮できる計算です。安静固定の時間を削り、リハビリテーション開始の前倒しや筋力低下・関節拘縮の最小化に直結する点が、現代の整形外科医療において高く評価されています。