2000年代以降、この古典的レトリックを現代のポップカルチャーに見事に接続したのが、脚本家・宮藤官九郎の手掛けた傑作ドラマ『タイガー&ドラゴン』である。落語の演目を現代の裏社会や下町の人間模様にパラレルに織り交ぜた同作において、古典の持つ残酷さとナンセンスなユーモアは鮮烈な輝きを放った。
宮藤官九郎が描く風刺コメディの真骨頂は、登場人物たちが極めてシリアスな危機に直面した瞬間にこそ、豆腐の角のようなくだらないディテールに足を取られる点にある。格好をつけて散ることもできず、間抜けな日常のなかに引き戻される登場人物たちの姿は、視聴者に強烈なカタルシスを与えた。古典落語の精神は、テレビドラマという大衆メディアを通じて、まったく新しい世代へとインストールされたのである。