食品サンプルの歴史を紐解くと、使われている主原料は時代とともに大きく進化してきました。サンプルの破損や変形を防ぐ第一歩は、手元にあるアイテムがどちらの素材で作られているかを正しく把握することです。
昭和初期から長らく主流だったのが「パラフィン蝋(ワックス)」を用いた蝋製サンプルです。蝋は加工がしやすく、本物の料理のような透明感や艶を出しやすい利点がある一方、食品サンプルの蝋が溶ける温度はおよそ50℃〜60℃と非常に低く設定されています。真夏の熱気や電球の至近距離に置くだけで容易に軟化し、ドロドロに溶け出してしまう脆さがありました。
この弱点を克服するために1970年代から普及したのが、合成樹脂(塩化ビニル・PVC)です。塩化ビニル樹脂はシリコン型に流し込んで加熱硬化させるため、耐久性・弾力性・表現力ともに劇的な進化を遂げました。しかし、食品サンプルに使われる塩化ビニルの耐熱性も万全ではなく、約60℃〜80℃で軟化や変形が始まります。熱に強くなったとはいえ、熱源に対して無敵ではない点に注意が必要です。