ネット上の誹謗中傷や営業妨害に対して投稿者の身元を割り出す「発信者情報開示請求の流れと期間」は、法改正によって過去数年で構造的な進化を遂げました。
従来の手続きでは、まずSNS運営会社に対して「IPアドレス開示の仮処分」を起こし、IPアドレスの開示を受けた後に、経由プロバイダ(NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、各社光回線など)に対して「発信者情報開示請求訴訟」という2段階の裁判を行う必要がありました。この旧制度では、特定完了までに10ヶ月から1年以上の歳月と多額の費用を要していました。
しかし、改正法施行により新設された「発信者情報開示命令事件(新非訟手続き)」の定着に伴い、SNS事業者と経由プロバイダへの審理を1つの裁判手続きの中で並行して進めることが可能になりました。その結果、2026年現在の実務では申立から約3〜6ヶ月で発信者の氏名・住所・電話番号・メールアドレスの特定に至るケースが標準となっています。
具体的な開示請求の流れは以下のステップで進みます。
ステップ1:証拠保全(URL、投稿日時、アカウント情報の保存)
画面のスクリーンショットだけでなく、該当投稿の完全なURL、投稿日時(タイムスタンプ)、侵害された権利内容(名誉毀損・侮辱・肖像権侵害など)を網羅的に保存します。
ステップ2:裁判所への「発信者情報開示命令」申立て
弁護士を通じて裁判所に対し、SNS事業者へのIPアドレス等の開示命令、およびアクセスログの消去禁止命令(保全命令)を同時に申し立てます。
ステップ3:経由プロバイダへの開示命令申立て・意見照会
特定されたIPアドレスをもとに、通信事業者に対して契約者情報の開示を求めます。この段階で、プロバイダから投稿者本人へ「情報を開示してよいか」を確認する意見照会書が郵送されます。
ステップ4:情報の開示と特定完了
裁判所が開示決定を下すと、契約者の氏名、住所、電話番号が開示されます。ここから示談交渉や損害賠償請求、刑事告訴へと移行します。