事故から40年を迎える2026年現在、象の足はどのような状態にあるのでしょうか。現場の物理的・化学的状態は、事故当時とは全く異なる新たなフェーズに突入しています。
第1の変化は放射能の減衰です。象の足に含まれる主要な放射性核種のうち、セシウム137(半減期約30.1年)やストロンチウム90(半減期約28.8年)はすでに半減期を1サイクル以上経過しました。初期に猛烈なガンマ線を放っていた短半減期核種が消滅したため、現在の線量は事故直後に比べれば大幅に低下しています。とはいえ、依然として防護なしで長時間接近すれば深刻な健康被害をもたらすレベルであり、危険物質であることに変わりはありません。
第2の、そしてより深刻な変化が「自己破壊による砂状化(粉末化)」です。事故直後は小銃弾を弾き返すほど強固だったガラス状のコリウムですが、物質内部から絶え間なく放たれる自己放射線によって結晶構造が分子レベルで破壊され続けています。これに湿気や温度変化が加わり、現在の象の足は表面からボロボロと剥がれ落ち、黄土色の微細な粉塵(放射性ダスト)へと変質しつつあります。
2016年末に4号機全体を覆う巨大な「新安全閉じ込め構造物(NSC)」が設置されたことで、外部への雨水流入や放射性物質の漏洩リスクは大幅に低減されました。しかし、NSCの内部では、脆くなった象の足が粉塵となって空気中に舞い上がりやすくなっており、遠隔重機による解体・回収作業における最大の技術的障壁となっています。