大波三兄弟を語る上で欠かせないのが、角界屈指のサラブレッドたる血統と、確固たる育成ルートです。三兄弟の祖父は、時津風部屋の名力士として昭和の土俵を沸かせた元小結・若葉山。卓越した技能と鋭い出足でならした名小結であり、引退後は年寄・錣山として後進を指導しました。さらに父親は、立浪部屋の元幕下・若信夫という相撲一家です。福島市内で父が営むちゃんこ店「若葉山」の土俵仕立ての店内で、三兄弟は幼少期から相撲の英才教育を受けて育ちました。
高校時代は3人揃って名門・学法福島高校相撲部に進学。東北屈指の強豪校で基礎を徹底的に叩き込まれました。しかし、高校卒業後の進路選択において、三男・若隆景だけが異なるルートを歩むことになります。長男・若隆元と次男・若元春が高卒ですぐに大相撲へ飛び込んだのに対し、三男の若隆景は大学相撲の名門・東洋大学相撲部へと進みました。
東洋大学相撲部では、名将・浜野文雄監督のもとで主将を務め、4年時には学生横綱のタイトルを獲得するなどアマチュア界の頂点を極めました。この4年間の回り道が、若隆景に「近代的なフィジカルトレーニング理論」と「低重心を保ちながら瞬時に差す技術的緻密さ」をもたらしました。兄2人がプロの泥臭い叩き上げの技術を体得したのに対し、若隆景は大学相撲のエリート教育による合理的な身体操作を武器にしたのです。異なるアプローチで成長した兄弟がプロの荒汐部屋で再び合流したことが、部屋全体の稽古レベルを飛躍的に押し上げる原動力となりました。